<6月> 男前、腹を括る

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「でも何が疑問なのか言葉にできなくて結局やるんだけど、グルグル考えるそうです。 そのうちわかるようになって、すっきりすることはあるのかなと、結構深刻で……それ言ったの一人じゃなかったから、俺自分のこと考えちゃいました」 「俺も石川からそれ聞いて、二人で話して気が付いたんです」  石川が話しているときに黙っていた渡辺が口を挟んだ。こいつは合いの手というかタイミングを計るのがうまい。割と穏やかな性格をしているのに見た目が派手だ。服装ではなく顔のつくりに華がある。『外向きだろ、渡辺は』という武本の一言で、渡辺は俺の下についた。 「どういうことの為に、この資料が必要だって言ってくれたり。何かする前に、どうして今これをやらなくちゃいけないと思う?ってすべてに意味があることを俺達に伝えてくれてたんだなって」 「そっか、それで石川は友達になんて言った?」 「まず、今度「これ何に必要なんですか?」って聞いてみるとか、自分が作った書類が誰の手に渡っているのか調べる。待っていても答えがわからないまま。だったら自分で色々やってみたり聞いたらいいんじゃないかって」 「教えてもらいっぱなしだけど自分らでも考えたらまだまだできることあるよな~って結論になりました。石川みたいに俺も友達に会って話してみようかなって」 「そっか」  そう言った武本は嬉しそうだ。自分のやってきたことが無駄ではないと思えることは誰にだって大事なことだ。新人二人は武本の意志をちゃんと受け取っている。
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