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「ようやくベースができたってところだな、二人は」
「どうなんですかね」
「あとはビジョンだね」
「ビジョン?」
「そ、どういう風に自分はなりたいのか、もしくは何をしたいのかってこと。日々過ごして経験値を積めばそれなりに仕事はできるようになる。でもそれだと時間と仕事を「こなす」だけの毎日だろ?自分をキープし続けるにはビジョン、ん~目標?なんでもいいけれど必要なんだ。ビジョンに向かうことを頭に置いておけば、今なにをするべきなのか自ずと見える」
「じゃあ、俺武本さんになりたいです!ちゃんと人に物事を伝えられるような」
「渡辺!ずっり~ぞ、今俺もそれ言おうとしてたのに」
……「人タラシ」武本め。
当の本人は顔をしかめている。そんな顔をしたいのはコッチだ。二人そろって武本さんで、飯塚の「い」の字もない!
「ダメだな、そんなちっさいのはビジョンでもなんでもないじゃないか。俺が言いたいのは……例えがチープだけど、社長になりたいと思ったとする」
「はい」
「渡辺は飯塚と一緒にいるから、よく社長さんや人の上にたつ人に会うだろ?その時になぜこの人はこのポジションにつけたのか、どういうところが人を惹きつけるのかを観察する。ただ単に商談する以外にも見えてくるものがあるはずだ。ただ月の数字だけを追いかけて商談していると何もみえないけど、心の持ちようや目標で視野が広がるんだよ、意味わかる?」
「はい!」
「大変よろしい。だから俺は二人にビジョンを持ってほしい。それを持ってくれたら俺はすっげ~嬉しいかな」
3人の輪の中からはずれてしまったような気がしてきた。ビジョンを持てと言ったところでそう簡単には自分の目指すものは見えてこない。見えないとしてもビジョンの存在を知ることで、それを追いかけることはできる。
武本は丁寧に話をして、新人にビジョンを持つことを促し、それを手にしてくれたら自分も嬉しいと素直に言える…… ほんと、敵わない。
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