<6月> 男前、腹を括る

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「結局おごるはめになったな」 「いいじゃないか、あいつらそれぞれ1000円は払ったんだし、クーポンで安くなったし」  二人と別れた後、武本とバーで飲みなおすことにした。 「別に俺いなくてよかったんじゃないか?今日」 「なんで?」 「なんでって、石川も渡辺も武本にブンブン尻尾ふってただろ。俺だけ蚊帳の外?な有様だったじゃないか」 「そんなことないって。存在自体に意味があるんだよ、お前の場合」 「それ意味わかんないって」  いい年をして拗ねる男も恰好が悪いので、このくらいにしておこう。 「それで、お前のビジョンはどうなった?」  いきなり聞かれた。俺は会社に対しても、今の仕事に何も持っていない。でもそれを言ってしまうと、自分の仕事もこなして新人に教え込んでいる武本に失礼だ。 「変な顔してるぞ、飯塚」 「……」 「決めたんだろ?」 「え?」 「好きなこと……そっちやることに決めたんだろ?」  ……何を言えっていうんだ、俺に。 「正直に言うと同じ仕事ができなくなるの、寂しいなと思ったんだ。ちっせ~よな、俺」 「そんなことない。俺だって考えた……からな」 「そっ……か。決めたんなら毎週俺にかまっている時間はないはずだぞ、飯塚」 「え?」 「知り合いの店に顔だして手伝いの真似事だって労働だ。平日は仕事もしているから無理がかからないはずがない。休むなり、顔だす時間をちゃんと決めたほうがいい」   確かにそれはもっともな話だった。新しいことを始めると失うものがでてくる。村崎の店にいくようになって、俺の休日は確実に減った。本気で世話になるつもりなら、村崎にだって話をしなくてはならないし、そうなると動き方も変わってくる。
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