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「俺、病気かもしんねぇ……」
唐突に恭平はそう言った。
「え?な……何の?…嘘…でしょ…?」
思わずうろたえるけど、恭平に今まで不調を感じた事はなくて、ぎこちなく笑って「冗談だ」と言われる事を期待した。
「わかんねぇけど……肺っつーか心臓っつーか…胸のあたり」
けれど返って来るのは深刻なセリフ。
「ど、どうしよう…保健室に行く?い…痛いの?」
「結構な、締め付けられる感じ」
「いつから?病院の方がいいのかな…」
「結構前から…高校入学した辺りからかな」
「そんなに?!なんでほっとくのよ…!恭平早退するって先生に言ってくる!」
私は医者でもない癖につい恭平を質問責めにしてしまう。
そして、自分ではどうしようも出来ない事に泣きそうになりながら席を立とうとした。
「…大丈夫だって」
「でも……私、何かできる?」
「こっち」
そんな私に恭平は笑って手招きをする。
不安になりながら近付くと、恭平は私に腕を伸ばして抱き締めてきた。
「え?何で――」
「ん。こうしてれば治る」
「………………は?」
「恋の病っつーか、そんなもんだから」
「…はあ、えぇぇ!な、何バカなこと言ってるのよ!」
「バカじゃねぇって、病人」
「バカでしょ!もう……心配して損した!」
「だってこうでもしなきゃ美沙、俺がぎゅっとしようとしてもすぐ逃げちまうもん」
「……」
恭平からささる視線。
「やっぱこうしてると落ち着くよな」
「は…離してっ!」
「無理。離せない」
「ば…ばかっ!ちょ…もう、………もう!」
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