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人の肌に触れるとその相手の記憶、感情を読みとってしまうという春樹の特殊能力。
その秘密を勝手に隆也に打ち明けてしまったという負い目なのだろうか。
けれどもそのお陰で春樹は隆也という本当の意味での友人を得られた。秘密を知っても尚、春樹への態度を変えず、心の内を気負い無く見せてくれる、奇跡のような友人を。
美沙にも「感謝してる」と伝えたはずなのに。なぜ美沙は必要以上に自分を避けるのか。
『美沙、避けなくても貴方には触れない。ぜったい心など覗かない』
面と向かって自分は、美沙にちゃんと伝えなければならないのだろうか。
今さら滑稽だが、そうすれば美沙との関係が今まで通り保てるなら、そうしようとまで春樹は思った。
死んだ兄の恋人。姉のように自分を見守ってくれる人。厳しい、けれど尊敬する職場の上司。
それ以上では無いはずなのに、相も変わらず春樹にとって一番怖いのは、美沙が自分から離れていってしまうことだった。
化け物のような能力を持つ、自分から。
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