第1章

8/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「あっ、もう」  松崎が急に乙女らしい恥じらいを見せた。優我の首根っこを掴んでいたとは思えない可愛らしさだ。 「す、すみません」  アイドルへの愛はストレートに表現できるが大人の女性は苦手な林田もしどろもどろである。 「今更なんだ。電話番号を交換しろ!」  亜塔はまだ酔っ払いのような絡み方をする。意外と暑さでやられたのは亜塔かもしれない。強い日差しの中ヘルメットを被っていたせいだ。 「電話。これです」  慌てた林田は思わずスマホをそのまま渡してしまう。その様子に科学部は大笑いだ。 「――大倉。後で覚えておけよ」  しっかりと林田のスマホを受け取った松崎だが、この恥ずかしい展開を起こした亜塔をしっかりと睨みつけている。 「こえっ」  迅が亜塔の代わりにそう言ったところで、この井戸問題は本当にお開きになった。この井戸問題が科学部に思わぬ展開をもたらすのだが、それに気づいているメンバーは誰もいないのだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!