第1章

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 その結束した様子に、ますます林田の評価を変えたのが松崎である。自分では今一つまとめきれていない科学部がこうして一つになるとは驚いてしまった。 「ピストンですか。何だかセンター試験の問題みたいですね」  桜太は思わずそんな感想を漏らしてしまった。入試問題は現実には役立たないだろうと考えていたが、意外と役立つ瞬間があるものだ。 「そうだな。石を押すのに利用されるのが水っていうだけだ。それにしても、あの土壌は何かを押しても大丈夫なほど固いのか?」  ふと基本に立ち返ったのは芳樹だ。圧力を掛けるにしても、ピストンの役割を果たせなければ意味がない。 「固いと思いますよ。田んぼに使われる土壌は水はけが悪くないと意味がありません。水を溜めるんですからね。周りの土も粘土質だと考えて問題ありません」  楓翔がすぐに補足した。物理に問題を取られて不満だったが、まだ地質学が役に立つようだ。 「つまりあれだな。絶えず流れているから押されたのではなく、田んぼを使う時に流れているせいで押されたんだ。一瞬の力と考えたほうがいいんだろうな。ピストンできゅっと押すように。ということは、最初に田植えする時が問題なのか」  桜太は言いつつこれは対策が必要なのではと思った。七不思議の解明をするはずが学校の地盤崩壊を発見している。このまま田植えシーズンで水を使う度に石が押されれば、そのうち他の崩落も招く。 「そうなると、水圧の発生を抑えたほうがいいよな。あの入り口を大きくしてしまって、高圧力を生まないようにするとか」  優我も同じように地盤の危機に気づいた。押しているということは、あの石が地面を掘削しているようなものである。
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