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「そうか。小さな流れに一気に流れる瞬間が一番危ないのか」
千晴が桜太たちの危惧を解りやすく言い直した。
「穴を大きくできないなら、井戸の方に石を入れて底にある石に届かないようにするしかないな。押せないほど重くすれば問題ない」
具体策を述べたのは芳樹だ。常識的な意見に誰もが納得したが、芳樹は捕まえた7匹のカエルに夢中だった。こういう残念な一面があるのも科学部ならではである。
「これはもう学園長に打診したほうがいいでしょう。松崎先生、ついて来てください」
林田は急に男らしくなって松崎を引っ張っていく。
「は、はい」
その松崎の顔が物凄く嬉しそうなことに、科学部男子は騒めいた。なるほどギャップに女性が弱いというのは本当だったかと納得する。この井戸問題よりもすぐに二人の恋に目がいってしまうのは、変人と言われていても男子高校生だからだ。恋に憧れるのは誰でも同じである。
「あれ?」
二人が教室を出て行こうとした瞬間に廊下を走って行く足音が聴こえ、桜太は首を捻った。誰かこの廊下を歩いていたのだろうか。人の少ない北館にしては珍しい。
「さて、何だか井戸はこれで解決だな」
亜塔は机に置いていたヘルメットを寂しそうに見つめる。結局は探検といかなかった。
「なあ。穴の大きさってどれくらいだった?」
具体的な対策は先生たちが考えてくれると解った桜太はのんびりと問題の検証をしたかった。このままではピストンに単純化した問題は役に立っていない。
「浮が余裕で通っていたからな直径が15センチ前後といったところじゃないか」
楓翔が指で大きさを作って示した。
「結構小さいな。だから水を流した瞬間に高圧力が可能だったのか」
桜太は水の流れも甘く見ては駄目だと思ってしまう。
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