死神とシスター

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「で、何か条件や希望は?」 礼拝堂で空中をふわふわと漂いながら、偉そうにふんぞり返っているおガキ様…じゃなっかた死神様。 昨日も思ったが羽もないのにどうやって浮かんでるんだろう。 魔法か?オカルト的な力か?何それ素敵。 「…どうして貴様は人の話を真面目に聞かんのだ」 「あー、すいません? えーっと、何か希望はないか?でしたっけ」 「そうだ」 厳かにうなずき、神妙な声で答える死神様。 でもしつこいだろうが見た目年齢14歳、こっちからしたら完全に大人ぶりたい年ごろの中学生にしか見えない。 言ったら多分物凄い顔で睨まれるから言わないけど。 「条件、希望、ねえ…」 ぶっちゃけるとカトリックのキリスト教徒ならだれでもいいんだよねえ。 先代も平気で酒飲んで女の子と遊んで、火事と喧嘩は男の華だぜ坊主!!ってノリの不良神父だし現神父もオカルトマニアだしでもう今さら制約も何もないって感じなんだけど。 あ、因みに先代は多分まだまだご存命中ですよ、ある日いきなり書置き残して消えたから今どこにいるかわかんないけど。 「なに」 「いや、神父という人種に対して不安を抱いただけだ」 …死神に心配されるとか、そんなに酷いのか……いや、自覚はあったけど。 「まあこんな条件にもならない条件くらいならすぐに後継ぎの一人や二人見つかるだろう。 取り敢えず、明日は町のほうに出るぞ」 「え、やですよ。俺もうここ数年まともに人とコミュニケーション取ってないんですけど?」 「だろうな。 だが、まさか貴様こんな場所にタイミングよく神父見習い希望者が来ると思って」 トントン 「「……」」 「あのー、すいませーん!神父様はいらっしゃいますかー?」 「えーっと、」 「…出てこい」 「俺が、ここの神父ですが」 扉の前に立っていたのは、明るい茶髪に、笑窪を作りにっこりとかわいらしく笑っている、20歳くらいの女の子。 …首からは十字架を下げている。 「わー、思っていたよりもお若いんですね!! あ、私 百合 笑里 <ユリ エミリ>っていいます 洗礼名はアグネス、1週間前に町のほうに越してきて、教会がある様なのでぜひ神父様にお会いしたいと…」 そのまさかが起こるあたり、人生何が起こるかわからない…。 「あの、どうかなさいましたか?」
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