510号室・上

2/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
電気を消した。 暗闇の部屋の中。 カラカラカラと音を立てて引き戸を開けた。 日光で色あせたスリッパを履いて、私は夜のベランダに出た。 まん丸お月さん。 今日も、月が綺麗ですね。 左手に缶ビール。曲げた左肘に柿ピーの入った小鉢を挟んで、右手でバリボリと柿ピーを頬張った。 弟の部屋。 弟から借りたスウェットを着て、冷蔵庫に入っていた缶ビールと、その辺にあったつまみを勝手に拝借。 だけど部屋の主はいなくて、私一人がこの部屋を陣取っていた。 そもそも私がここに来たのは、料理が出来ない“義弟”の為に“継母さん”から頼まれて、わざわざ仕事が休みの日に来てやったっていうのに。 肝心の弟は居酒屋のアルバイト。 今晩も日付が変わるまで帰ってこないらしい。 あたし、お腹減ったんだけどー 居ない相手の変わりに、眼前のお月さんにでも文句を言いたい。 .
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!