悪巧み出来るんなら、何でそれを公務で生かさないのかね?

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「これは…ワインですか?」 「そうよ。今日は予報では満月だし。良い機会よ。姑として嫁と親交を深めてくるわ!」 「え?ちょっと待って、母上?牢屋棟に行くつもりですか?」 「そうよぉ、結構良い物らしいのよ、このワイン。」 「いやいやいやいや!"王太后"がわざわざ牢屋棟に赴くことないでしょ!?ステファニーが出て来てから晩酌すりゃあ良いじゃないですか!?」 「その頃には私は帰っちゃってるわ。 んー……赤ワインかぁ。チーズも持って行こうかしら…。」 「はぁ……。それなら俺が行きますから!」 ラッセルはワインを取ろうと手を伸ばすが、マルグリットに阻まれる。 「貴方も呑みたいんでしょ?このワイン。」 言葉に詰まるラッセル。 確かに瓶の凝ったデザインからして良いやつだと分かる。味が気になる。呑みたいです。 「ダメよぉ。これは私とステファニーで開けるんだからぁ。」 「俺も行きます。」 「ダメよ、嫁と姑の親交を邪魔する気?あんたは留守番してなさい。あの精白パンの相手でもしてなさい。」 「息子を仲間外れにして楽しいかよ。」 「もしかして私に焼きもち焼いてるの? 何よぉ、可愛いところあるじゃない、ラッセル!でも私が行くから!あんたは留守番よ!」 「うるせぇ、クソババア。俺も行くっつってんだろ。」 マルグリットとラッセルが親子喧嘩を勃発させようとしている頃。 ロレッタの宮殿へ訪れる者がいた。 「よく来てくださいました、バーモント侯爵。」 「お招き感謝いたします、ラルミナ女男爵。いや……王妃殿下とお呼びすべきですか?」 「ふふふ…。そんな気の早い…。」 「いやいや、もう直ぐで御座いましょう。」 バーモント侯爵、と呼ばれた髭面のまあまあイケオジの言葉にすっかり気を良くしたロレッタは、バーモント侯爵に座るように促した。 サイネス・ジュドー・バーモント侯爵。 バーモント家は昔から力のある人物にすり寄って、生き残ってきたコバンザメだ。 侯爵という爵位も金で買ったと噂されるほど、何かと黒い噂が絶えない。 「あの件…恙無く進めていて?」 「はい、ご安心を。金で動くようなゴロツキです。」 「証拠は残さないでね。ここまでの苦労が台無しよ。」 「勿論ですよ……ロレッタ王妃殿下。」 「嗚呼…良い響きねぇ。」 高笑いをしているロレッタに、メイドに変装しているメリルは哀れみの目で見ていた。 (そのずる賢さ…。なんで公務で生かせないかなぁ…。) お茶汲みが終わったメリルは部屋から出て行き、ワゴンを廊下の死角になる場所に置いて、素早く空いている部屋に入る。
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