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「おばあちゃま。」
物思いに耽っていたエリザベス王太后は、幼い孫娘の呼ぶ声で現実に戻った。
向かいのソファーに行儀よくちょこんと座っているのは、イーヴァ王国女王ソフィアと王配 ミンスター公エドワードの末娘 アリシア・レイラ・ボルボン王女である。
いつ部屋に入ってきたんだ、この子は……。
娘が30代後半になって産んだ、しかも他の子供たちとも歳が離れているため、アリシアは蝶よ花よとそれはもう大事に大事に育てられている。
「どうしたの?アリシア?」
「おばあちゃまの武勇伝を聞きにきましたの。」
「武勇伝って…」
4歳になったばかりのアリシアは最近、祖母の昔話を聞くのが好きらしく、毎日毎日やって来る。
「アルバートお兄ちゃまが言ってました。おばあちゃま若い頃はイケイケだったって。」
「イケイケって……。もっとマシな言い方あったでしょうに…。」
アルバート、一体妹に何てことを教えているのだ。
イーヴァ王国王太子 アルバートはこの末の妹をめちゃくちゃ溺愛している。そりゃ16歳も年の離れた妹だ。溺愛せずにはいられないだろう。
「そうねぇ。前は何を話したかしら?」
「おばあちゃまがお嫁に来て少しした時ぐらいのお話。王太子妃になれなかった、おじいちゃまの側室たちにおばあちゃまが嫌がらせ受けてやり返したってお話。」
「ああ…。そんなことあったわねぇ。」
王太后は何処か他人事のように答える。
あの子供じみた側室たちの嫌がらせ。嫌がらせされるのは想定内だったが、売られた喧嘩は高値で買う主義なので、倍にして返してやった。
温室育ちのご令嬢たちには少しばかり刺激が強かっただろうか?嫁いで半年もしないうちに、数人の側室が実家に帰った。
まぁその話はいずれ詳しく語ろうか。
「おばあちゃまはどうして、おじいちゃまと結婚することになったの?」
「そう言えば話してなかったわね。いいわ。
おじいちゃまとの結婚の話を聞かされたとき、おばあちゃまはまだ15歳だったわ……。」
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