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「こら二人とも。エリー叔母様でしょう?」
「お姉さま!!」
「お姉さま!!何処にも行かないで!」
エリザベスに縁談が舞い込んで来た、と誰かに聞いたのだろう。
大好きな叔母が何処か遠くに行ってしまうと幼いながらも感じとったのだろう。
エリザベスに抱き付き、泣いている2人の姪の頭を優しく撫でながら、縁談を聞かされたときの事を何処か他人事のように思い出した…。
それは刻を遡ること1か月前 ーーーーー
「どうして断らなかったのですかっ!!??」
エクトリア帝国外宮の応接室で、モントウォール公爵夫人のドスの効いた声が響き渡った。
「姉上!!落ち着いて下さい!!」
「姉上!!とにかくそれを置いて下さい!」
「レイラ!!将軍の言う通りそれを置け!!いくら皇帝でもそんなもので殴られたら死んでしまうぞ!!」
「ソレがこれぐらいで死ぬわけないでしょう!!旦那様!!そこをお退き下さい!!これぐらいしないとわたくしの気が収まりません!!」
怒り狂うレイラ・アリシア・モントウォール公爵夫人は弟である皇帝に花瓶で殴りかかろうとしている。
それを必死に止める夫と2人の弟。テーブルの下で嵐が通り過ぎるのをすっかり縮こまって待っている皇帝。
レイラは先帝の第一皇女として産まれ、第一子優先のこの国で時期女帝として育てられた。しかし、舞踏会で出会ったオスカー・ルイス・モントウォールに恋をした。レイラ皇女の猛アタックの末、2人は想い合うようになったのだが、レイラ皇女は皇位継承順位第1位の次代の女帝。オスカーはモントウォール公爵家の嫡男。跡取り同士の2人の恋は前途多難のド修羅場だった。
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