縁談

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そんな2人の恋を実らせようと、3人の弟たちは姉のために頑張った。 ただ単に自分らが跡継ぎたいからとかそういうのではなく、というか出来れば継ぎたくないのだが、いつも勉学でも武術や馬術、あらゆる事をソツなくこなし、鉄仮面のように眉すら動かさない、同じ血の通った人間か?と疑いたくなるあの姉が、笑ったり照れたり思い悩んだり、いつもの威厳はどこ行った!?と目を疑うほどオスカーの前では1人の恋する乙女と化してしまうのだ。 弟たちはそれが嬉しかったのだ。次代の女帝としていつも凜とした表情しか見せない姉が、いつも難しい顔をしていた姉がここまで自分の想いを露わにするなんて……。 弟たちの頑張りの甲斐あって、先帝である父は2人の結婚を認めた。この時、オスカーは22歳、レイラは17歳だった。結婚により皇位継承権は放棄したのだが、"皇女"の称号は残されたままだ。 皇位継承第2位のレイラの年子の弟 ウィリアム・アレクサンダー・ハーディーが皇太子となり、20年前に父から譲位され皇帝に就いた。何度も言うが、出来ることなら継ぎたくない、姉が継いでくれれば…と思ったのだが、姉が幸せに暮らしているのならば致し方あるまい。 「姉上!仕方なかったのです!!」 「何が仕方ないですか!!ウィリアム!!どうせクイーンにっ!!……いいえ!!ジョアンナに言いくるめられたのでしょうっ!!」 で、冒頭に戻る。 「悪い縁談ではないと思いますが……。」 「お黙りなさい!!ウィリアム!!兎に角これで貴方の頭をかち割って差し上げましょう!!」 公爵夫人は中々物騒なことを言う。 大国 エクトリア帝国皇帝もこの姉にはいつまで経っても敵わない。怒らせるとそれはもう聖人も腰を抜かしてしまうような勢いで怒る。地獄からの使者かと思わざるを得ないぐらいめちゃくちゃ怖い。土下座して姉の怒りが収まるなら、軍隊も憲兵も警察もいらん。 「姉上!お止めください!」 レイラの2番目の弟 陸軍中将フィリップ・ディヴィット・ハーディーは姉が持っている花瓶を一瞬の隙を突いて奪い取った。さすがは陸軍中将。
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