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「返しなさい!!フィリップ!!」
「いけません!!姉上!!」
レイラの3番目の弟 外務省調査室室長 アンドリュー・ジョーン・ハーディーは姉の肩を抱いて、椅子に座らせた。
「まぁまぁレイラ。貴女の怒りも分かるけども。ここは一度話し合いましょう。」
この人、いつ入って来たの!?
カートに乗せられたティーセットをテキパキと慣れた動作で準備しているのは、姉弟たちの母である皇太后 アレクサンドラ・テレジア・ハーディーである。
「はい、レイラ。カモミールを少しブレンドしてあるから気持ちが落ち着くはずよ。」
穏やかな母の声とカモミールの香りで落ち着きを取り戻しつつあるレイラは大人しく母が淹れてくれたお茶を啜った。
「ウィリアム、いつまでそこにいるの?良い加減出てらっしゃいな?そこにいては話が出来ないではないですか。」
「は、母上…。」
嗚呼…助かった………。皇太后の思わぬ登場で3兄弟とモントウォール公爵はそう思わざるを得なかった。
「エリー。お入りなさい、もう大事ありません。」
はい!?何ですって!!??母上???
「失礼致します。」
応接室の扉が開き、1人の少女が入って来た。
この少女こそ、本編の主役であるエリザベス嬢だ。
艶やか栗色の髪に、パッチリとした大きな目、父 オスカー譲りの金色の瞳、スッと伸びた鼻筋に雪の如く白い肌。男どころか女をも魅了する美貌の持ち主。美貌だけに頼らず、高い知識と教養を兼ね備えた才色兼備だ。14歳で社交デビューして以降「社交界の華」と絶賛されている。
「さ、エリー。お祖母様の隣にいらっしゃい。」
「はい。」
優雅な動作で祖母の元へ行き、その隣に腰掛ける。
母の登場によりやっと落ち着きを取り戻した姉がまた怒り狂うんじゃないかとビクビクしている3兄弟とは裏腹に、エリザベスは落ち着いた口調で皇帝に話しかけた。
「皇帝…いえ叔父上。私に縁談が来ていると噂で聞きました。どうか私にもそのお話をお聞かせ願いますでしょうか?」
現実逃避しかけていた皇帝は、姪の凜とした声に何とか現実に戻った。
「うむ……。そうじゃな、イーヴァ女王からその話を受けた時の話をしようか。」
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