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声を合図に村長が足で地面を蹴った。
蹴りあげた一歩でユウキは肉薄する村長の動きを読み、彼女は冷静に狙いを定め木刀を突き出した。
太刀筋は積み上げた年数がものをいう。
巧みな体重移動によって勢いと重さの増した刃は木刀の域を超え、真剣に勝るとも劣らぬ鋭さを持っていた。
それを村長は顔の横に木刀を添え、突き出された刃を真正面から体の外へと片手で逸らす。
ユウキはすぐに標的を村長の顔に絞って力を籠めるが、老人は木刀を傾け力の方向を変えるだけでユウキの木刀を完全に往なした。
自身の木刀の刀身を傷つけることなく村長は木刀を縦に持ち替えて振り下ろした。
少女は盾で防ぐものの、単純な力の差によって後退を余儀なくされる。
そこからは二つの武具で一つの太刀からの猛攻を防いで逸らして躱(かわ)し続ける防戦一方の戦いに移った。
ユウキが剣劇の応酬の中で出来る隙を見つけては木刀を押し返し、一転して攻撃に出る。
この繰り返しを続けて、ユウキの体が音を上げるか村長に一太刀入れるまで訓練は続けられる。
結局、この日も勝利することは叶わなかった。
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