序章 ようこそ、始まりの世界へ!

12/14
前へ
/14ページ
次へ
ユウキは手にジワリと浮かんできた汗を握りこんだ。 何時か自分がこの人物を超えて《勇者》になるのだと思うだけで、今までにない緊張感が彼女を襲った。 「よって、これからは実践ではなく『戦闘』訓練に入る」 村長の声はいつも村の人々を見守る『優しい村長』の雰囲気をしていなかった。 ユウキの空手になったはずの両手が武具を求めて空を切る。 少女は以前から感じていた村長の深層に漸く合点がいった。 与えられた名の通りユウキは物怖じせずに立ち上がる。 村長もそれに合わせて木刀を握ろうとして、挙げた右腕を降ろした。 「いや、今日はここまでじゃな」 村長はユウキの視線を尻目に母屋へと足を向ける。 彼女はその姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。 ==========
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加