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ユウキは手にジワリと浮かんできた汗を握りこんだ。
何時か自分がこの人物を超えて《勇者》になるのだと思うだけで、今までにない緊張感が彼女を襲った。
「よって、これからは実践ではなく『戦闘』訓練に入る」
村長の声はいつも村の人々を見守る『優しい村長』の雰囲気をしていなかった。
ユウキの空手になったはずの両手が武具を求めて空を切る。
少女は以前から感じていた村長の深層に漸く合点がいった。
与えられた名の通りユウキは物怖じせずに立ち上がる。
村長もそれに合わせて木刀を握ろうとして、挙げた右腕を降ろした。
「いや、今日はここまでじゃな」
村長はユウキの視線を尻目に母屋へと足を向ける。
彼女はその姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
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