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あれから十年が経った。
母の言葉通り《勇者》が《勇者》に成る為に膨大な時間と苦痛を一人で背負った。
天啓から丸一年費やした激闘の果てに、報酬として夫婦が手にした子供は元気に同世代の子供たちと走り回っている。
その天辺から背中まで伸びる金の糸が波打つ。
産まれた子供は、歴代勇者の中でも希少な女性の《勇者》だった。
これには出産で疲弊していた母親も目を丸くしていたが、産まれたのは《勇者》としてではなく自分の子供だと気付くと夫婦はすぐに生命の誕生を祝福した。
そして母親の腕に抱かれた小さい勇者に、存在を確定するための名前が与えられた。
「ユウキ!そろそろ帰るわよー」
飛んできた声に子供たちは呼ばれた人物を見る。
立ち止まった少女は苦笑いを浮かべ、頭を掻くとすぐに笑顔になり声の主の方へと走り出した。
「じゃあ、また明日ねー!!」
後ろを向き、母親と繋いだ逆の手を大きく振って別れを告げると、夕日の照らす畑に囲まれた一本道を二人で歩き出した。
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