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「村長!今日も訓練お願いします!!」
「これこれ、そう焦るでない。まずはその矢を降ろさんか」
嵐の如くやってきたユウキの手には、家から出るときには影も容も無かった矢が握られている。
それも一本ではなく三本握られていたが、ユウキはそれらを無造作に村長の机の上に置いた。
「奇襲狙撃訓練が役に立っているようで儂も喜ばしい限りじゃな」
「これでも最初の内は生傷作ってばかりだったけどね」
とても齢(よわい)九歳と思えない少女。
それでも、大人の男より逞しくなったユウキが浮かべる笑みは年相応の屈託のないものだった。
「うむ、では本日の授業を開始する」
「はーい」
日も落ちた夜に授業をするのは、一日中遊びまわっていたからではない。
寧ろ、午前中は他の子供たちと共に学校での勉学に勤しんでいたくらいだ。
これは天啓を得た村人全員はユウキを完成した《勇者》にするためにあらゆる経験をさせることを会議で決めたからだった。
人類同士で敵を作らないように礼儀作法はもちろんのこと、人間心理についても学を修めさせた。
矢の置かれた机の前にある椅子に座り、持ってきた荷物から教科書となる書物を取り出した。
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