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「そうじゃな……今日はこの国の成り立ちについて話そうか」
「国?皆ここのことは村って呼んでるけど、国ってなに?」
待ってましたと言わんばかりに、村長はユウキの本を捲る。
そこに描かれていたのは大群衆の中心に立つ《人類》の絵画だった。
「国と言うのは、今から一万年以上前に人間が互いに争わないために作り出した集団のことだ」
「……この人が国っていうのを創ったの?」
「その通り。かくいうこの村も国に属しているのじゃよ」
ユウキは村長の話を聞きながらも、怪訝な顔をして民衆の上に立つものを指で叩いた。
「でも、この人は《勇者》じゃない」
ユウキの言葉通り、絵画ではあるがその姿は歴代勇者たちとは似ても似つかないものだった。
「《勇者》が必ずしも人の上に立つとは限らない」
そういう村長の声はユウキにも解る別の気持ちが込められていた。
思わず口を開けたまま村長を見上げていたユウキだが、気づくと大きな手で頭を乱雑に撫でられていた。
「ほっほっほ。もう過ぎたことじゃ、過去を現在まで引きずるのは愚者の選択。……ユウキよ」
「なに?村長」
「お主は歴代勇者にも、ここにいる村の者にも、例え敵であってもそうじゃ」
「過去に共感せず、経験を罠にして戦え」
開かれた眼は、ユウキに向けられているのにその姿を捉えてはいなかった。
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