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「今日の講義は世界管理システムが及ぼす社会への影響力についてだ。
君たちも知っているとは思うが、10年前に導入された世界管理システムは現代社会に多大な利益を生み出し続けている。
そのシステムの末端に当たるのが君たちの家庭にも恐らく少なくとも一台はあるあだろう、アンドロイドだ」
大学の講義が始まっていた。
ここ、倫機大学はアンドロイド産業に多くの技術者を輩出する、名門大学である。
ここに集まる生徒は、皆アンドロイドについて人一倍の知識があり、世界管理システムについても、その機構についても、相当の知識があった。
「世界管理システムを動かしているのは全世界に7台あるスーパーコンピューターであることも知っているだろう。
私たちが住んでいる日本にも2台の親機がある。
一つは最近話題にもなったイロハだな。
イロハは世界中のアンドロイドの頭脳を司っていることはみんな知っているだろう。
アンドロイドは最近ではかなり、個性豊かになってきたが、昔と同様、基盤にあるのはイロハである」
頭が重くなりそうな講義内容を熱心に聞く一人の学生がいた。
肩ほどに伸ばした艶やかな髪が風に緩くなびいている。
顔だちははっきりとしたほうで、目はパッチリと電子黒板の方を向いている。
講義終了後、皆がやっと終わったと解放感に溢れて帰る中、その女学生だけは帰らなかった。
「教授。少しお話しを聞いてもいいですか?」
「君が質問に来るとは珍しいな。
君は、言っちゃ悪いが、大学での立場は良いとは言えないだろう」
「私の過去に貴方が干渉する権利はありません。
私はあなたの講義を聞いた学生として、質問をしているのです」
教授は鼻で笑うと、皮肉たっぷりに了承の返事をした。
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