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サクとは、大学が一緒だった。飲みサークルと呼ばれていた団体からも気付けば抜けて、仲間内4人でいるのが当たり前になっていた。あとは、キオとクミ。
「あ、キオは呼んだの?」
大学卒業後、1・2年くらいはたまに会っていたが、その後は何となく連絡も取らなくなった。サクはたまに会っていたようだったが、もう10年以上が過ぎた今となっては、その友人関係がどうなっているかも聞いていなかった。
「あー、これから」
誰よりも先に、こちらに連絡をくれたことは分かっていた。
サクとも、もう何年も会っていなかった。たまに連絡を取るときに、近況をうかがい知れたようなものだった。今は、こちらにも生活がある。
「けど、まさかユウが一番に結婚するとは思わなかったよな」
不意にサクがそう言う。
“まさか”
フッとこちらが笑う。
「サク、そういうこと言えるようになったんだね」
馬鹿みたいに好きだった片想いの相手が、こちらの想いに気付いているのは明らかだった。あの頃。けれど、サクが好きだったのは私ではなくクミの方だった。男女2人ずつ。そんなことが起これば、自然と同じ空間を過ごすのは無理があった。どこか危うげな可憐さのあるクミと、気遣いが過ぎるサクと、そんなところもすべて見ていたかった私がいて、だからあの大学4年間は滞りない日常になったのだ。本当は、一番周りを見ていたキオがいて。
「それ以上に、ユウには世話になったからな」
サクが気を遣って口にしなかった想いに、ずっと見てきたからすぐに気付いた。だから、勝手にずっと背中を押してきた。なのに…
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