幸福な婚姻

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――――…

サクが結婚をする。
私が結婚したとき、自分のことのように喜んでくれたサクが。彼の優しさと、胸の奥に残る想いに心が痛んだことを、この日を迎えてふと思い出す。今、同じように心から祝福できる自分が、また少し前へ進めているのだという実感になった。

「ユウ、久しぶり」

挙式の前の受け付けで、ふと後ろから声を掛けられた。どこか聞き覚えのある声に、その主がすぐに誰だか分かる。

「キオ」

振り返ってすぐ、私は目を見開いた。身なりを整え、少しばかり皺も増え、けれどもう痩せこけてなどいないキオの姿が飛び込んできた。
他愛もない挨拶を交わすキオの表情に、今、彼が落ち着いて生活をしていることが伝わってくる。どこか晴れやかな、吹っ切れたようなその佇まいに、私は思い切って口を開いた。

「あれから、どうしてたの？ずっと、病院に通う毎日だったでしょ？今は…」

そこまで言って、次の言葉が出てこなくなってしまった。
命をつなぐものがたった一つ、延命措置の機械であったクミのその後を私は知らない。彼女のそんな姿や、常に彼女を見守っていたキオを見ているのが苦しくて、面会に行くのをやめてしまったからだった。そんな自分が、今更どの面を下げて声を掛けるというのだ。

「あぁ、籍を入れることにしたんだ」
「え？」