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サクが結婚をする。 ジューンブライド、なんて言葉があるくらいこの時期は挙式の季節。雨の多いこの月に、挙式を挙げようなんて不思議な習慣だと思ってしまう。それでも、彼の門出を祝うように、頭上には雲一つない空が広がっていた。 ――――… 「式、決まったんだよね」 久しぶりの電話で、サクはそう切り出した。 「そっか、やっと決めたんだね」 ずっと機会を窺うように、あるいは外堀を埋めるように、日々努力していたサクを思い出す。気長に過ごし過ぎていたから、本当にやっとの結婚。 「ユウには心配ばかり掛けたからな。とりあえず、早く報告しとこうと思って」 いつだったかサクが強がって、「結婚なんてめんどくせぇ」と言っていたことを思い出す。昔、まだ馬鹿みたいに笑い合っていた頃。 「いつ?」 「6月17日」 「やっぱ、ジューンブライドか」 彼女が、そういう迷信じみたものが好きなのは聞いたことがあった。女はまじないや迷信が好きな生き物だ。 「で?」 「ん?」 サクがきょとんとした声を上げる。 「式、あたし呼ばれてる感じ?もしかして」 「そりゃ」 こちらの意図を察して、当然というような声がする。まだ、彼女と会ったことはない。 かつての記憶を辿る。いつだって、サクの背中を押すのは自分だった。長い年月サクを見てきたのだから、当然なのかもしれない。 「祝儀目当てだったら勘弁してよね。こっちはカツカツの生活してるんだから」 「ばーか、だったら手ぶらで来いよ。お前の負担になんかならねーよ」 「どの口が」 言って、笑った。 ずっと荒れていて、その度心配をさせられた日々が懐かしい。お互い、なかなかいい歳になったのだ。
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