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━━━海遊館の帰り道。
「イルカすごかったね」
「それならサメもだろ?
やっぱりあの迫力はサメじゃねぇとな」
「えー。イルカの迫力もよかったけどなー。
私、あんなに間近でイルカ見たの初めてだったよ」
「…………なぁ、ミカ」
人通りが全くない。やるなら今だ。
名前を呼びながらポケットに手を突っ込む。
「───アキくん」
しかし、烏森の言葉に重ねるようにミカが声を出す。
くるっと振り返って、ミカは笑った。
「今日はありがとね。
また来ようよ!」
思わず息を呑んだ。
その笑顔が、夕日に照らされた瞳が、綺麗だと思った。
ポケットに入れた手を出して笑い返す。
「─────…あぁ、何度でも来よう」
───────ガタンゴトン、ガタンゴトン。
「次はどこに行きたい?」
「どこでもいいよ。
でも今度は、アキくんの行きたい所に行ってみたいな」
揺れる電車の中で次の予定を立てる。
「んー。じゃあ、植物園は?
俺がよく行ってた場所なんだけど…」
「いいよ、行こう!」
「じゃあ、次はそこな!!」
再びポケットの中に手を突っ込んで、ポケットの中に入れている物を握る。
しっかりしろ、類。
彼女に近づいたのは復讐のためで、それ以外の感情は不要だ。
自分の目的を見失うな。
もう失敗しない。
次は必ず成功させる。
「今度こそ……」
誓いのように呟いた後、ポケットに入れた物を強く握りしめた。
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