第32話 眠る少女

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━━━海遊館の帰り道。 「イルカすごかったね」 「それならサメもだろ? やっぱりあの迫力はサメじゃねぇとな」 「えー。イルカの迫力もよかったけどなー。 私、あんなに間近でイルカ見たの初めてだったよ」 「…………なぁ、ミカ」 人通りが全くない。やるなら今だ。 名前を呼びながらポケットに手を突っ込む。 「───アキくん」 しかし、烏森の言葉に重ねるようにミカが声を出す。 くるっと振り返って、ミカは笑った。 「今日はありがとね。 また来ようよ!」 思わず息を呑んだ。 その笑顔が、夕日に照らされた瞳が、綺麗だと思った。 ポケットに入れた手を出して笑い返す。 「─────…あぁ、何度でも来よう」 ───────ガタンゴトン、ガタンゴトン。 「次はどこに行きたい?」 「どこでもいいよ。 でも今度は、アキくんの行きたい所に行ってみたいな」 揺れる電車の中で次の予定を立てる。 「んー。じゃあ、植物園は? 俺がよく行ってた場所なんだけど…」 「いいよ、行こう!」 「じゃあ、次はそこな!!」 再びポケットの中に手を突っ込んで、ポケットの中に入れている物を握る。 しっかりしろ、類。 彼女に近づいたのは復讐のためで、それ以外の感情は不要だ。 自分の目的を見失うな。 もう失敗(引いたり)しない。 次は必ず成功させる。 「今度こそ……」 誓いのように呟いた後、ポケットに入れた物を強く握りしめた。
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