第28話 振り払った手

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初めは、自分の隣にいてくれるなら、誰でもよかった。ただ独りではないことを実感して、安心したかった。 でも、あなたに出逢ってからは変わった。 あなたがたくさんの『初めて』をくれた。 初めて、誰かに隣にずっといてほしいと思った。 初めて、誰かの隣にずっといたいと思った。 初めて、誰かにこの声が届いてほしいと思った。 初めて、誰かとずっと手を繋いでいたいと思った。 初めて、誰かのことを気にするようになった。 初めて、悲しみ以外の涙があることを知った。 初めて、誰かにこんなにも執着した。 初めて、こんなにも嬉しいと思うことに出会えた。 初めて、こんなにも苦しいと思うことに出会えた。 そして、生まれて初めて、 恋という感情を知った。 あなたは、私にたくさんの『初めて』をくれたのに……。 どうして私は、あなたに酷いことしか返せないのだろう。 ……アキラさん。 もう傷付けないから、私のこと嫌いになってよ…。 嘘でもいいから、嫌いだと言って……。 じゃなきゃ私は、あなたのことを諦められなくなる……。 ━━━その夜。 いつもの公園に行って、ジャングルジムに登る。 星を眺めていても、足音は聞こえてこない。 ───────ポト…ポト…。 雨が降ってきたと思って空を見上げたら、雲は一つもなかった。 でも、星空は見えなくなる。 自分が悪い。こんな事になるのもあたり前だ。 来てくれるかもしれないなんて、都合がよすぎる。でも、ほんの少しだけ、もしかしたらと期待を持ってしまった。 私が行かなくても来てくれていた時のように、もしかしたら来てくれるのではないかと。 ……甚だしいにも程がある。あれだけのことをしておいて……。 その日から、いくら待ってもアキラが来ることはなかった。
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