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苦しくて悲しくて涙が溢れてきてしまうけれど、それは雨なのか涙なのか分からなくなる。
それでもなぜか保坂君のキスは優しくて、まるで保坂君に愛されているような錯覚を覚えてしまう。
キスも頭に触れる手も、背中に触れる手も――。
次第に抵抗する力は弱まっていき、ギュッと瞼を閉じた。
雨が降る中、どれくらいの時間キスをされていただろうか。
唇が離れたのは、すっかり私の息が上がってしまった頃だった。
それでも保坂君との距離は近いままで、ドキドキせずにはいられない。
どうして大嫌いな私にキスしたのか聞きたいのに、息が上がってしまってうまく言葉が出てきてくれない。
あまりに距離が近すぎて、保坂君の瞳しか見えなくて。
彼が今どんな表情をしていて、なにを考えているのか汲み取ることができない。
それでも背中に触れる手は優しくて、気持ちは混乱させられるばかりだった。
保坂君が口を開いたのは、私の呼吸が落ち着いてからだった。
「……早く中入れ」
「――え?」
一言そう言うと、離れていくぬくもり。
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