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必死に忘れようとしても、どうしても思い出してしまう。
まともに富山君の顔が見られなくなってしまい、目を伏せた。
「そっか、ならよかった。……行こうか」
「あっ、うん」
歩幅を合わせるように一緒に教室へと向かっていく。
「ばあちゃんからの伝言」
「え?」
「昨日はすごく楽しかった。またいらしてね。だって」
こちらを見て微笑みながら話す富山君に、口元が緩んでいく。
「ううん、私の方こそ楽しかった。是非またおじゃまさせて下さいって伝えてもらえる?」
「了解」
なんだろう、この感じ。
ただ話をしているだけなのに、自然と口元が緩む。
おばあちゃんの話をしているから? それとも相手が富山君だから?
階段を上がりきり、先に見えてきた進学クラスの前に着くと、富山君は足を止めなぜか私に向き合ってきた。
「富山君?」
不思議に思い呼びかけると目尻に皺を作って微笑み、右手を差し出してきた。
「昨日はなんか中途半端になっちゃったから、改めて言わせて?……今日から友達としてよろしくね」
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