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そうだった。私、昨日富山君に……。
キスのことで頭がいっぱいになっちゃっていた。
「こちらこそ」
慌てて差し出された手をそっと握りしめると、富山君があまりに嬉しそうに笑うものだから、胸を締め付けられてしまった。
富山君は私に好意を寄せてくれているんだよね?
それなのに私は保坂君のことが好きで、昨日だって保坂君のことばかり考えてしまっていた。
返事は文化祭が終わってからでいいって言ってくれたけれど、断るつもりでいるのに、本当にこのままでいいのかな?
「あの、富山君?」
そんなことに悩んでいる間も、なぜか富山君は握った手を離してくれない。
今は朝の登校時間だし、生徒会長である富山君はなにかと目立つ人だ。
ちょっと感じつつある視線が痛い。
やんわり離そうと試みるも、反対にギュッと握りしめられてしまった。
「あのっ」
さすがにもう限界だ!
すぐに離してもらおうとしたんだけど……。
「もう少しこのままでいさせてよ」
返事に困る答えに、一瞬息が止まってしまった。
「いや、でも……」
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