保坂クンは私のことが大嫌いなんです。

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「あっ、おはようございます」 なにやら慌てた様子のおばさんに挨拶をすると、勢いよく駆け寄ってきたかと思えば、ランチバッグを私に差し出し頭を下げた。 「冬華ちゃんお願い!竜のバカ、お弁当もお財布も忘れて行っちゃったのよ。悪いんだけど学校で竜に渡してくれないかな?」 「えっ!?わっ、私がですか!?」 予想外の頼みごとに、ここが外だということも忘れて大きな声が出る。 「おばさん、もう仕事行かなくちゃ間に合わなくて。……お願いできる?」 困ったように頼み込んでくるおばさん。 切願されては、断れるわけがない。 「……分かり、ました」 渋々了承し受け取ると、おばさんはパッと表情を輝かせた。 「ありがとー!本当に助かるわ」 「いいえ」 小さい頃からなにかとお世話になっているおばさんにお願いされては、断れるわけがない。 たとえそれが、どんなに嫌なことだったとしても。
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