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「きっと竜も私に届けてもらうより、大好きな冬華ちゃんに届けてもらった方が、嬉しいでしょうし。冬華ちゃんが出る前に間に合ってよかったわ」
おばさんの言葉に、ズキンと痛む胸。
だけどそれに気づかれないよう笑顔で「渡しておきます」と伝え、足早に家を出た。
「大好きな冬華ちゃん……か」
学校へ向かう途中、さっきのおばさんの言葉を思い出せば、先ほど同様胸が痛んで仕方ない。
おばさんってば一体どれだけ昔の話をしているのだろうか。
私にはそんな記憶など一切ないというのに。
胸が痛すぎて空を見上げれば、天気予報通りの雲ひとつない青空が広がっていた。
そんな青空を見ていたら少しだけ痛みが緩和されて気がしたけれど、それもほんの一瞬。
これから学校に行って今手にしているランチバッグを彼に渡すことを考えたら……やっぱり憂鬱になり、気持ちは沈んでいく一方だった。
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