505人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん、こんなものかな?」
そして最後に鏡の前でとびっきりスマイルの練習。
ママが驚くほど早起きして、普段滅多にしないメイクを軽くだけど施して。
どうしてこんなことをしているのか。
それはもちろん、今日が私にとって特別な一日で、新たな生活のスタートだからだ。
「おいこら夕陽、なんでそんなに今日は気合い入ってんだ?」
「げっ、パパっ」
入念に髪を整えていると、まるで忍者のように背後から現れたのは寝起きのパパだった。
つい本音を漏らしてしまうと、鏡に写るパパは不機嫌そうに顔を顰めた。
「なにが『げっ』だ。パパに向かって!」
「アハハ……ごめん、つい」
笑って誤魔化すも、いまだにパパの機嫌は直りそうにない。
ジトッと視線を向けたまま隣にやってくると、歯を磨き始めた。
「ちょっとパパ!今私が洗面台使っているんだけどっ」
最初のコメントを投稿しよう!