ねがい

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「もぉ、なにやってんのーー。早くしないと待ち合わせ遅れるよ!」 「んー。あー。靴紐ほどけた、ちょっと待って。」 「はぁ?ちょっとそれ、さっきから何回目?!」 「あー。さぁ?」 「もうーーー!わたしが結んだげる!」 そう言って彼女は俺の前にしゃがみこんで、 靴紐を結ぶ。 近いな。 甘い匂い、長いまつげ、浴衣からみえる鎖骨、 靴紐にふれる細い指、 夏の暑さが、俺の頭を支配する。 「なぁ、やっぱ今日帰らねぇ?」 「はぁ?何言って、、!」 彼女が言い切る前に細い腕を引き寄せて、 強引に唇を奪う。 浴衣姿、かわいすぎ。 こんなの他の奴らに見せらんない。 帰り道。 わざと緩く結んだ靴紐と、結びかけの紐のほどけた靴のまま。 隣で真っ赤な顔でうつ向く彼女。 俺は来年も一緒にいられるように、となんとなく七夕らしい願いをつぶやいた。
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