雷雨の夜を

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「この程度の鬼を喰らっても、大して力の足しにはならんな・・・」 自らを傷つけながら鬼を喰らう斗真を見つめる、巴御前の視線が憐(あわ)れみを帯びる。 それに気付いた斗真は、否定するように視線に背を向けた。 「まだまだ、この程度では奴らに遠く及ばない。 いつか奴らを斬るために、オレにはもっと力が必要だ。 そのために、己れを捨てる覚悟は済ませてある。 多くを奪われた、あの日にな」 「斗真・・・ いや、今は何も言うまい。 お前も今や名実共に、立派な木九衣家の当主じゃ。 ならばワシは当主の決定に従い、役目を果すのみじゃ」 斗真の背中に、深い哀しみと静かに秘められた強い意志を見た巴御前は、言いかけた言葉を胸にしまう。 「御前、帰るぞ」 二人はまだ降り続く雷雨の夜に、潜むように姿を消した。
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