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窒息の苦しみと死への恐怖、そして何より愛する男に裏切られた哀しみに涙がボロボロ流れた。
「ククク。
なんという旨さだ。
お前の悲しみが、手を通じてオレに流れてくるよ。
愛する男に裏切られて死んでいく女の悲しみは、何度喰ってもたまらんなぁ。
欲を言うなら、もっとオレを憎んで欲しかったがね」
圭はニヤニヤと下卑(げび)た笑みを浮かべる。
その顔は、沙弥の知っている圭とはまるで別人のように、悪鬼の形相に変わっていた。
「そうさ。
この時のために、お前に優しくしていたんだよ。
お前の愛を感じるたびに、この時を想像し、どれだけ待ち焦がれたか。
おっと、そろそろ意識が無くなるか。
さようなら、沙弥」
圭が絞める指に力を込めた。
「グ・・・げ・・い・・」
「外道、そこまでじゃ!」
沙弥は闇に落ちていく意識の中で、最後に少女の美しい声を聞いた。
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