姉の期待に

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ーー十二月二十四日早朝ーー キキキキキン! まだ陽の昇らぬうちから、激しく金属を打ち合う音が道場から響いてくる。 「ほれほれ、どうした斗真。 凛香(りんか)に一矢むくいて見せんか」 「御前、ちょっと黙ってろ」 巴御前が送る望んでもいない声援に、苛立って反発する。 道場では、斗真が姉の凛香と毎日行っている朝稽古に汗を流していた。 「チィッ!」 斗真が執拗に繰り出す斬撃を、凛香はことごとく刀で弾き、さばいていく。 実際、斗真の剣速は、常人が目で追える速度を軽く超えている。 しかし凛香は、まるで約束組み手でもしているかのように、難なくかわしてみせる。 木九衣 凛香。 身長、158センチ。 今年で28才になる。 黒髪のポニーテールに、斗真と同じく美しい顔を持つ。 彼女の風貌から、その身に斗真をあしらえる程の力を秘めていると、想像できる者はいないだろう。
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