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凛香に仲裁に出られては、巴御前も口をつぐむしかなかった。
幼い頃に父母を亡くし、それ以来木九衣家と斗真のために、我が身を削り尽くしてきた凛香を、一番間近で見てきたのは他ならぬ巴御前なのだ。
「すまぬ、凛香。
少しばかり口が過ぎたようじゃ。
まったくお前には敵わんの」
「いえ。
私こそ、出過ぎた発言。
申し訳ございませんでした」
巴御前に頭を下げると、凛香はクルリと振り返り、巴御前がやり込められる様を、会心の笑みを浮かべて見ていた斗真に苦言を呈した。
「斗真。
技は互角だとしても、アナタの力も速さも私より数段上よ。
それでも私から、一本も取れないのは何故?
アナタは攻撃する気が強すぎる。
アナタは戦いの場で、もっと気を鎮めなければならない。
自分自身をコントロールする術を学ばなければならないわ」
凛香にたしなめられて、斗真の顔からニヤけた笑いが消えた。
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