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その日は、十二月にしては珍しいほどの雷雨だった。
夕刻とはいえ、分厚い雲に覆われた空は既に暗く、街にはポツポツと街灯が灯りだしている。
ガラガラガラ・・・
時折雷鳴が響く度、稲光が暗く重苦しい空を白々と染めた。
バシャバシャバシャ・・・
この極寒の氷雨の中、傘もささず雨具も着けず、狭くいりくんだ路地を、縫うように走り抜けていく若い女が一人。
女の長い髪も衣服も、既にボトボトに濡れ、身を切るように冷たい真冬の風は、容赦なく体温を奪っていく。
女は、しきりに後ろを気にして、何度も振り返っていた。
しかし、それでも一瞬たりとも足を止めることなく、必死に路地を駆け抜けて行く。
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