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「フッ」
巴御前が、あまりに取り乱すので、斗真は思わず鼻で笑ってしまった。
「と、斗真!
笑っておらんで、さっさと始末せんか!
だいたい、お前はーーー」
「御前、了解だ。
鬼よ、覚悟はいいか?」
(ババァの説教は長くて困る)
御前の話しを途中で遮り、再び切っ先を圭に向けた。
「ぬうう~。
舐めるな、若造!
百二十年、生きてきたこの剛鬼(ごうき)が、貴様ごときに喰われてたまるか!」
ベキベキベキ・・・
圭の体が大きく膨れていく。
口は大きく裂け歯は鋭く尖り、爪は長く伸び、鋭利な刃へと変化する。
体は赤黒い固い鱗に覆われた。
そして目は吊り上がり、瞳は鬼特有の燃えるように輝く赤眼(せきがん)に変わる。
すっかり化け物の姿に成り果てたその顔に、薔薇の花束を持って笑っていた、あの優しそうな圭の面影は、欠片も残っていなかった。
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