2人が本棚に入れています
本棚に追加
「完全に暗くなるまで待って、それから逃げよう」
女は膝を抱えて丸まり、このまま無事に時が過ぎていくことを祈った。
女の年は23から25ぐらいか。
長い黒髪と色白の肌を持ち、特別ではないが、可愛らしい顔立ちからは、清楚な印象を受ける。
どう見ても、命を狙われるような状況からは縁遠いはずなのだが・・・
「これから、どうしようか・・・」
例えこの場をしのいで逃げ切ったとしても、いずれ再び追っ手は自分の元にやってくるだろう。
生き延びるために、今の生活は手放さなければならないことは、女も薄々覚悟していた。
女は先の見えない不安を振り払うように首を振る。
しかし女の期待は、廃ビルに不意に響いた少女の声によって、断たれてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!