1人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたの?」とだけ、口にして、
「また、なんかあったの?」は飲み込んだ。
この前は、「非常食用に隠しておいた缶詰の並び方が変わっていた。」、だった。
よく知られているパターンで、被害妄想的に「誰かが盗った。」というならまだわかる。
うちの場合はさらにひどい。
「私がぼけていないか試そうとして、動かしたのがわかるかどうか誰かが動かしたに違いない。」と言うのだ。
そんなことを試すほど、ヒマな人間なんていないだろうに。
そんなことで、ぼけているかどうか、わかるわけもないだろう。
そのまた前は、「注文していないビーフシチューの缶が届いた。」だった。
たしかに年がいくつになっても、少々こってりしたものでも、たまには無性に欲しくなるだろう。
そんな気分の時に、注文してしまったのかもしれない。
そして、それを悲しいことに忘れたのかもしれない。
たとえそうでも、1000万も缶を注文したわけでもなく、たかだか10缶位、気にすることはないのだ。
だけど、完璧主義の祖母は、自分がわからないことはいやなのだろう。
ぼけてても、その事実がわかるのがいやなのだ。
結局その時は、「誰かが勝手に注文した。」と言い張ったのだが、
注文書の文字が祖母の筆跡だったため、
満ちるがやんわりと、
「わぁ、みんなのために頼んでおいてくれたのね。」と1オクターブ高めの声で、方向を希望的な方面にそらし、事なきを得たのだった。
【嘘でも人を幸せにするなら、OK。誰かを不幸にするなら、真実は本当の真実でない。】
最初のコメントを投稿しよう!