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「――奏、起きてる?」
トントン、と、風呂の扉がノックされて我に返った。
「蓮登、さん?」
慌てて立ち上がると、くらっとした。
酔った身体で湯船につかったまま考え込んでいたせいで、気付かぬうちにのぼせてしまっていたらしい。
「きゃあ――」
驚いて悲鳴を上げる奏を抱きとめたのは、仕事帰りとは思えぬほど服装も髪も乱れていない蓮登だった。
ざあと、冷たいシャワーをかけられる。
「や、だ。
またスーツ濡れちゃう……」
ぼんやりとうつる視界の中で、蓮登の髪はびしょ濡れになっていた。
「そんなことどうでもいいから黙ってろ」
また、酔っぱらってやらかしてしまった。
奏は思い切り表情を曇らせて、唇を噛み締めた。
奏にバスタオルを巻きつけ広い脱衣所に座らせた。手早く自分の衣服を脱ぎ、バスローブを身に着けるとひょいと奏を抱き上げ、ベッドへと運び口移しで水を飲ませた。
「別に、怒ってないから。
そんな顔するな。
奏が無事ならそれでいい――」
言うと、蓮登は奏の頬にキスを落とす。
「――ごめん、なさい」
優しさに胸が痛くなる。
何が寄り添いたい――だ。
迷惑かけてばっかりで、私、サイテー――
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