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「蓮登さんだけ、ズルい」
その一言で、蓮登は的確に奏の言いたいことを理解する。
「奏が気絶するからだよ。起きていれば一緒にお風呂に入ろうって誘ってあげたのに」
のんびりした口調に悪意なんてないのだろうけど、奏は恥ずかしさで耳まで紅くなった。
どこで鍛えているのか知らないけど――実際は蓮登は定期的にジムに通っている――服を着ている時とはまた違う、セクシーな姿を知ってしまった以上妄想せずにはいられない。
一緒にお風呂になんて入れるわけないじゃないっ。
「――一緒に、じゃなくていいのっ」
「人が我慢してるのに、何朝から不埒な妄想してんの?」
「してない、してない……。ああ、もうーっ」
「今更恥ずかしいことなんてないと思うけど?」
「あるに決まってるでしょ」
「だからね、真っ赤な顔して怒ったって、それ俺を煽ってるだけだって言ってんじゃない。
昨日の今日だから労わってやろうと思って、折角優しいお兄さんを演出してんのに――何台無しにしてくれてんの」
涙目で睨む奏に対し、なんとか首をもたげてきた本能を飲み込んで連登はその耳に触れるだけのキスを落として、囁く。
「言っとくけど、次はもう容赦しないよ?」
――夕べ、どこをどう容赦してくれてたと言うの。
あれ以上って、一体どんな世界が待っているというの?
そんな思考とは裏腹に、身体の奥の方はぞくっと疼きはじめようとしている。認めたくないけれど、耳に与えられる、甘い刺激と、優しく攻めてくる言葉に、どうやら思いのほか私の身体は弱いらしい……。
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