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「プライベートにまで首を突っ込もうとは思わないけど」
なんて言いながらも、スーパーの袋をぶら下げている辺り、ミナの心は母親のようなものなのだろう。
「どうせ、食べてないんでしょ。
時間もないし、適当にお惣菜買ったから食べて。
アンタが私からの電話にもでず、オンナとイチャイチャしているなんて、信じられない事態だわ」
「男としてはむしろ健全なんじゃないですか?」
珈琲を淹れながら蓮登は言う。
「しかも、この時間に家にいるってことは同業者?
そうじゃなかったら、まさかヒモ……?水商売人のヒモになるなんて、顔に似合わず太い根性してるわね」
「違いますよ。
強いて言うなら、あの子が俺の命綱なんです。だから、無理矢理引きちぎらないでくださいね。お願いします」
冗談じみた口調で言うので、ミナもどれほど真剣に受け止めれば良いのかわからずに目を白黒させた。
「まあ、そういうことにしておきましょう。
仕事に影響させないと言うなら、大目に見るわ。
その代り、命綱の安全は自分で守りなさいよ?
また、あれから例のストーカーが出たのよ。今朝、しつこく呼び鈴鳴らされて困ってるって連絡があったんだから」
新人ホストへのストーカー騒ぎは、まだ終わってないようだった。
ミナは、今朝ようやく寝ついたところを起こされてどれほど迷惑したかを、熱をこめて語りはじめる。
しばらく黙って朝食を取りながら耳を傾けていた蓮登は、ミナが唇を閉じたところでようやく言う。
「警察に駆け込めばいいじゃないですか」
店に直接現れなければ、店としてはそれほど問題はないように思う。
もちろん、ミナは経営者として放っておけないと言うのだろうけれど。
「もちろん、そうしたわよ。
でも、そこでの居心地が悪かったって言うか……」
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