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「あら、本当に騙してないのねー。
蓮登が女性に甘言蜜語を囁かないどころか、子供扱いしている様なんて初めて見たわぁ」
ミナは目を丸くしている。
「失礼ですね、先輩。
子供扱いなんてしてませんし、時と場合によっては、彼女にだって甘い言葉を囁きますよ」
と、あまりにもさらりと言うので、奏はむせてしまった。
だって、甘い言葉を聞かせてくれたのは、ベッドの上でだけ――だよね?
「ちょ……、蓮登さんっ」
「はいはい。どうぞ」
ミネラルウォーターを差し出すと、奏の動揺の原因を悟った蓮登はクスクス笑った。
無邪気な子供のようにじゃれ合っている二人を見て、ミナは毒気を抜かれたのかしばらく黙っていたが、二人が落ち着いたのを確かめてから唇を開く。
「蓮登。
こうなったら、そろそろ、オーナーの話、引き受けてくれてもいいわよね。
こちらのお嬢さんのためにも、安定を求めたくなったでしょ?」
「まだまだ今のままでいいと思うんですけどね。
ミナさんがオーナーだと落ち着くんですよ。
百歩譲って雇われオーナーというわけにはいきませんか? 私には先輩のような統率力なんて……」
「そういうのは、その立場になれば自然と身につく、もしくは無理してでも身に着けるものなの。
いつまでも若いつもりでいたいんだろうけど、おあいにく様。アンタ健康に気遣っている様子は微塵もないし、このまま、ホストに甘んじていたらあと数年でナンバーワンの座なんて抜かれちゃうわよ。
落ちぶれたホストとしてハニビに居座られても困るのよ。だから今のうちに先のことを考えて」
蓮登はいつになく真面目な顔で話を聞いた。
眉間に皺が寄り、しばらく思考を巡らした後ゆっくり唇を開く。
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