命綱

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「わかりました。  じゃあ、後、一か月だけ待ってもらえませんか?  その後、彼女と結婚して、それからすべての名義変更に応じます」 「結婚が先なのが何故かさっぱりわからないけど、まぁいいわ。  じゃあ、その時までに書類揃えておくから。  書類以外の話はすすめていって良いわよね。  じゃあね、彼女さん。ホストと結婚したい、なんて気持ち私には微塵もわからないけれど、どうぞ、末永くお幸せに」 かなり前から持ちかけていた話に結論が出たことに安堵したのか、ミナは立ち上がると満面の笑みを浮かべて部屋から出て行った。 ストーカー騒ぎなど、もはやどうでもいいらしい。 「……ね、今結婚って言った……?」 何を言ってるのか全く分からなくて、目を丸くして呆然としているのは奏だ。 「駄目なの?  籍なんて入れずに、身体だけの関係を続ける方が奏の好み?」 不思議そうに首を傾げるのはやめてほしい。セット前の黒髪がさらりと揺れて、なんとも可愛らしい印象だけど、これに騙されてはいけない。 「そんなこと言ってないわよ」 「もしかして、俺とは身体だけの関係で済ますつもりだった?」 「――そんなわけないでしょ」 その上、突然被害者になったような顔で見つめてくるのやめてほしい。 だいたい、私から強要してないわよ?身体の関係なんて――。
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