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「ごめん!俺、そんなつもりで言ったんじゃなくて」
「え?」
「いや、その、何ていうか...恥ずかしくて」
その言葉を聞いて、涙が止まる。
隣を見れば、耳まで真っ赤に染めた千早くん。
そっか、もしかしてさっきから目を逸らされてたのって、照れ隠し?
「だぁーはっはっは!何それ!お前朝っぱらからそんなことやってたわけ?」
事の成り行きを聞いたハルカくんは、机をバンッバンッと叩きながら大笑いする。
千早くんはさっきまでタコのように真っ赤にしていた顔をげんなりさせて、頬杖をついてそっぽを向いている。
「ハルカ、笑いすぎ」
ダメだ。
つかさの声でさえ届いていないみたい。
「それで黙って消えるとか格好付けすぎだろ!」
「消えさせたのはハルだろ」
「え、そうだっけ?」
その後は2人で騒いで、何だかとっても仲が良さそうで。
男の子って怖いイメージがあったけど、無邪気なところもあるんだなぁなんて。
見てるだけで楽しくなってしまった私はふっと笑ってしまった。
気付いてこちらに顔を向けた千早くんと視線がかち合う。
初めて逸らされなかった目。
だけど心臓が跳ねて、気を抜くと私の方が目を合わせていられなくなりそうになる。
「そういえば、まだ名前聞いてなかった」
千早くんが柔らかく笑う。
その瞬間、目の前の景色が一気に明るくなった気がして、思わず目をこすった。
「...浅野陽依です」
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