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駅が近付いて再びブレーキがかかる。
同時にカーブに差し掛かり、私の身体は大きく揺れた。
掴まるところがなくて、つい目の前の男の子の腕を鷲掴んでしまった。
「ご、ごめんなさい!」
とっさに謝るけれど、ぐ、ぐ、と小刻みにかけられるブレーキのせいで手を離すことが出来ない。
だって、だぶん、このまま転んだらパンツ丸見え。
知らない女にいきなり手すり代わりにされるなんて、こんなに迷惑な話はないよね。
駅に着いたら真っ先に土下座しよう。
そう思っていると、ふわりと身体が軽くなって。
これって、もしかして、支えてくれてる?
チラリと視線を上げると目が合って、また急いで下を向いた。
もー嫌だ。
何やってんの私。
「あ、開くよ。気をつけて」
「へ?あ、あぁ、はい!」
身体が自由になり、私は電車の外に飛び出した。
のは良いけれど。
キョロキョロと辺りを見渡す。
どうしよう、どっちに行けば良いのか全く分からない。
あ、そうだ、さっきの人にお礼言わないと。
慌てて振り向くけれど、どこにも男の子の姿はない。
こんな場所で迷子なんて!というか時間!遅刻!
とにかく勘で走り出そうとする私。
だけど寸のところで手首をつかまれて。
ぐいっと後ろに倒れそうになったところを...さっきの男の子に受け止められた。
「そっちじゃない。戻りの電車はこっち」
そう言った男の子の顔は少し焦った表情で、もしかして私のことを探してくれていたのかも
なんて都合の良いことを考えてしまうのは漫画の読みすぎ?
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