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「ひーよーりーぃ」
「つかさー!」
無事に学校まで辿り着くと、正門前でつかさが迎えてくれた。
つかさにはケータイで状況を説明して、入学式に間に合うよう先に学校へ向かってもらってたんだけど。
私も遅刻を何とか免れたようでほっとする。
「びっくりさせないでよー。ドアにスカート挟まれるってどれだけ鈍くさいの?」
「それさっきの人にも言われたよ」
「さっきの人って?」
「あれ?」
おかしいな。
ここまで一緒に走ってきたはずなんだけど。
先に行っちゃったのかな?
「...あ、飛び込み乗車してった人のこと?!」
「飛び込み乗車?」
思い出したようにつかさはパチンと手を叩いた。
「そうそう。あたしが気付いて振り返った時に、同じ学校の制服来た男子が一人飛び乗ったのが見えたの」
「きっとその人だ。私のこと助けてくれたの」
「へーえ、親切な人もいるのねぇ。ひょっとして好きになっちゃったとか?」
「んなっ、ないない!」
つかさにイジワルな目で見つめられて、一気に顔に熱が集まる。
さっき会った人のことを一瞬で好きになるなんて、そんなドラマみたいな出会い私にあるわけがない。
確かに、少し、格好良いなとは思っちゃったけど。
何も言わずに消えちゃうんだもん。
きっと、本当に、偶然助けてくれただけだよね。
「でも同じ学校なんだからいずれ会えるんじゃない?ねぇ、何て名前だったの?」
「あ、そういえば何だっけ?」
「聞いてないの?」
「うん」
「あー、もう」
「ごめんね、見つけたらちゃんと教えるから」
「うん…って、こんなことやってる場合じゃなかった!入学式遅れちゃう!早く行こう。クラスも気になるし」
「あ、待って!つかさ」
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