怪談DJ『友人の兄』

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ちょっと遠出をして買物に出かけた先で、小・中学校時代の友人に出くわした。 「うっわ、久しぶり! 覚えてる? 何年ぶり?」 「覚えてるよ~! え~~~っと、確実に十年は会ってないよね?」 もしたかしたらそうかな~~?と思いつつ、お互いに様子を伺っていたんだけど、思い切って声をかけてみたら、やはりそうだった。 小学校高学年で転入してきた私の、隣の席にたまたま座っていた彼女。 そのために教科書を見せてもらったり、学校の中を色々案内してもらったりで仲良くなった。 喫茶店に移動して、しばらくはお互いの近況報告や懐かしい四方山話に花を咲かせる。 「今、何してるの?」 「ん~、基本は自宅で仕事かな。会社に出る事もあるけど、月に数回だね。そっちは?」 「高校卒業してからOLやってたんだけど、28の時に結婚したんだよ」 「お互いに歳とったね」 等と笑い合う。 「そう言えばさ、お兄さん元気?」 彼女には5歳年上の兄がいる。 仮に「Nさん」とするが、私は直接にこのNさんと顔を合わせた事はない。 だが、小学校時代からよく彼の話を聞いていた。 熱があるから休むように言ったのに、薬を飲んだから大丈夫と勝手に学校へ行ってしまい、布団に彼がいないことに気がついた親が大騒ぎした話。 夜に窓の外で「入れてくれ」と動きまわる猫の影を「あれはきっと幽霊に違いない。窓を開けて確かめてみよう」と、泊まりに来ていた自分の友人を脅かした話。 ぜひ一度会ってみたいと思っていたのだが、結局、その機会は訪れなかった。 「お陰様でね。私よりもピンピンしてるよ。ああ、そうそう。兄貴と言えばね……」 実を言えば、彼女と出会った時から期待していたのだ。 以前にこんな話を聞いた。 彼女の兄であるNさんは多趣味で、その頃はバイクにはまっていたそうだ。 休みの日には、ツーリングで結構な距離を走り回っていたらしい。 ある夜もNさんは愛車にまたがり、県境にある峠道を走っていた。 後続車も対向車もなく、気分良く飛ばしていたNさんの目に、前方にあるカーブが見えてきた。 テンションの上がっていたNさんは、無意識にスピードを上げてカーブへと突っ込んでいった。 道に合わせてバイクの車体を傾けようとした瞬間……。 いきなり横から男の手が現れて、Nさんの頭をヘルメットごとグイッと押したのだ。 思わず体軸がずれ、視線の動きに合わせてバイクのハンドルを反対側へ切ってしまう。
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